『タモリのジャポニカロゴス』

街で見かけるヘンな看板特集。

「長生き予防医学研究所」――「長生き予防」だとオカシイから正しく直せ、という問題。

結局、磯山さやか「長生きそくしん*1研究所」だけが正確。

でも、そもそも予防医学という分野があるわけで、そこを崩しちゃマズイんじゃないですかね? この研究所の設立目的は、恐らく、(少なくとも建前上は)「長生きの為に予防医学を研究する」ということだと思われるし。実際、タモリ関根勤は、さすがにそれを踏まえて、「長生きの為の予防医学研究所」と解答。結局、「の為の」は冗長で、簡潔であることが望ましいとのことで、不正解に。

だったら、「長生き・予防医学研究所」とか、あるいはわざわざ「長生き」を付けようというならいっそ、予防医学・長生き研究所」とかで良いのでは?

その他にも、たとえば、「ストップ万引きキャンペーン」はオカシイから、「万引きストップキャンペーン」にすると良いとされていたのを、これまたタモリ関根勤に、「ストップ万引き!キャンペーン」にすれば良いと指摘されていた。

あと、「ゆるやかな急カーブ」は単に「急カーブ」にすれば良いとのことだけど、でもその看板が言いたかったことはたぶん、本当は「(Rの)大きなカーブ」ってことだったんじゃないかな・・・・・・。

このように、「オカシな」表現を「適切な」表現に修正するのは良いけど、そもそも元の意図を汲んでいない「適切な」表現に修正したところで、それは単に統語論的に適切な」表現になるに過ぎず、「意味論的ないし語用論的に適切な」表現になっているとは限らないので、全く意味が無いのでは? それどころか、むしろその方が(看板として)「適切でない」表現になってしまう場合だって多々あるはずです。

たとえば、これは確かになかなか微妙ではあるんだけど、「リニューアル・オープン ――新しくなった『変わらぬ味』をお楽しみ下さい――」は、「新しくなった」を取れば良い、という例もあった。でも、これを書いた方だってそんなことは重々承知の上で、だからこそわざわざ「『変わらぬ味』」とカッコを付けているのだとは考えられないでしょうか? 恐らくリニューアルに伴って、味も実際にいくらか変えたんですよ、きっと。でも、だからと言って、それまでの味を全く変えてしまう程のレシピ変更をしたわけじゃなくて、以前の味のベースを飽くまでも残しつつ、さらにその味を印象的にするための変更をした――いわば味の「ベースアップ」を図ったということなんじゃないかな。だからそれをわざわざ、「新しくなった『変わらぬ味』」という風にちょっと洒落た(?)形で表現してみたのだ、ということだって充分考えられるし、むしろそう考えた方が自然なような気がしませんか?

「オカシさ」を笑いものにしたり、さも鬼の首を取ったかのように指摘するのも良いけど、元々それを言ったり書いたりした人の意図やその場の状況などを全く考慮しないで、あるいは「寛大の原理(寛容の原則)」を一切適用しようともせずに、そんなことをしたところで、逆にこっちが笑いものになってしまうだけのことがあるので、気をつけましょう(自戒を込めて・・・・・・)。

*1:「撲滅」は書けて「促進」は書けないとはこれいかに?