"Causes of death of philosophers" Part7

http://www.dar.cam.ac.uk/%7Edhm11/DeathIndex.html

とりあえず小休止を休止して第七回目*1

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  • Godel: Became incomplete
    • ゲーデル:「不完全になった」・・・深い、何か知らないけど、深いなあ。「生」は完全、「死」は不完全てことですか。でも、少なくとも現実的には、生ほど「完全」からほど遠いものも珍しいように思えるわけですが。
    • いわずものがなですが、K. Godel*2が証明した、ペアノ算術の公理系を含む無矛盾な形式的体系に関する不完全性定理(第一不完全性定理・第二不完全性定理)から取られています。第一不完全性定理というのは、極簡単に言えば、「数学内部の手続きではその成立も不成立も証明出来ない(決定不可能である)ような数学的命題が存在する」というもの。そしてそうした命題の中に「数学はその内部に矛盾を含まない」も入っていると言えるようになって、「数学は、それが無矛盾である限り自分で自分自身の無矛盾性を証明出来ない」という第二不完全性定理が出て来るわけです。ちなみに彼は、第一階の述語論理に関しては完全性が成り立つこと(「完全性定理」)を証明しています。
  • Goldman: Unknown internal causes
    • ゴールドマン:「未知の内的原因」・・・やばいんじゃないですか。もしかしたら未知のウィルスかもしれないじゃないですか。ちゃんと調査したんでしょうね。
    • A. Goldmanは、知識論における信頼性主義(reliabilism)の主唱者として知られています。と言っても、彼自身いろんなバージョンを提案しているので、論文'What is justified belief?'での一番単純なバージョンを挙げれば、「ある人Sがある時点tにおいてある信念pを持つことが正当化されるのは、信頼のおける認知的な信念形成プロセスを経ている場合」というもの。正当化に関しては、その信念を持つ当人自身によって正当化され得る必要があるとする内在主義と、そこまでの必要はなく、他人から正当化され得るならそれで良いとする外在主義とがあって、その区別に従えば、この信頼性主義は外在主義に属します。つまり、信念形成プロセス自体は確かに当人内部の認知的なプロセスではあるんだけど、それが具体的にどういうプロセスであり、そしてそれはどれほどの比率で信頼のおけるものなのか、といったことについては当人自身が把握している必要はない、というわけです。だから彼の「死因」は、当人自身が把握していなかった当人(の身体)内部の原因による、ということになっているのでしょう。
  • Grice: Non-natural
    • グライス:「非自然的(な原因)」・・・どうも苦し紛れの「死因」であるような気がしますね。ちょっとつまらないかも。
    • P. Griceは『論理と会話』(勁草書房清塚邦彦ASIN:4326101210)において、自然的意味と非自然的意味という区別を設けました。自然的意味というのはたとえば、「この斑点は風疹であることを意味している」のようなもので、それに対する非自然的意味というのはたとえば、「彼女が目線を合わせてくれないことは、彼女に嫌われていることを意味する」のようなもの。後者は、行為者が相手にある信念を抱かせることを意図していた場合の、(敢えて言ってしまえば)その意図のこと。まあ、この非自然的意味が成立するための必要十分条件を規定しようとすると、いろいろな条件を延々と付け加えて行かざるを得ないという徒労が待っているだけなので、彼はそれをやっている内に体調を崩したんだと考えた方がよっぽど「自然」なんですけどね。まあ、非自然的意味の成立条件を追い求めていたら「非自然的」な何かによって死に至った、と。

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またいつでも気軽に小休止を取るつもりですので、悪しからず・・・。

*1:2003-11-8の企画趣旨説明、参照。

*2:'o'にはウムラウトが付きます。