『ハコイリムスメ!』
今クールのドラマで注目していたのは、『トリック』と『あなたの隣に誰かいる』の2本だけのつもりだった。
『トリック』は、それなりに(飽くまでも『トリック』として)安定しているので良いが、『あなたの・・・』は、ここまで来るとさすがにクドさが過ぎて、いい加減疲れた。ほとんど夏川結衣を見るだけが目的だったり。でも、このところようやく話が転がりだした!? だとしても、やっぱりちょっと引っ張り過ぎだったかも。絶対、その「引っ張り」に疲れ果てて脱落している人多数。
そんな中で、個人的にダーク・ホースだったのが『ハコイリムスメ!』。
飯島直子と深田恭子の組み合わせでラブ・コメディで・・・って、出演者は、まあ良いけど、内容的にはあまりにも「ベタそう」という感じがして、正直、積極的に視る気なんて全くなかった。
ただ最初は、『あなたの・・・』の流れもあって、惰性で視ていた。それがいつの間にか、ハマっている自分に気づいてしまう。
うーん、意外だ。
でも、その責任(?)の一端は、明らかにそのストーリー展開にある。そう、途轍もなく起伏が激しいのだ――想像以上に。
具体的な内容は敢えて書かないけど、図式的に言えば、たとえばあるエピソードがだんだん盛り上がって行って、ある意味お決まりのハッピー・エンドになりそうな気配濃厚になって来た、正にその直前――急転直下、最悪な状況へと真っ逆さま。しかも、その突き落とし方が半端じゃない。「おいおい、いくら何でもそこまですることないんじゃないの?」と、思わず脚本家(中園ミホ)に物申したくなることが何度あったか知れない。
でもやっぱり、さすがにそれをいくらかでも補うような明るい展開が再び始まる。すると、普通、恐らく多くの視聴者はここで一安心するだろう。何というか、それが、ストーリーの転がし方の定石とでも言うべき流れなわけだ。そして多くの視聴者は、多かれ少なかれそうした定石を暗に前提した上でドラマを視ている。
しかし、そこはこのじゃじゃ馬脚本家(って勝手に命名してすみません)、そう一筋縄ではいかない。
どうやら彼女には、そんな定石に僕ら視聴者たちを安住させてくれるつもりなど毛頭無いらしい。むしろそれどころか、敢えてこの「定石」を逆利用している感さえある。しかも、嬉々として、だ。きっとそうに違いない、そう断言したくもなる――折角、あるエピソードのバッド・エンドを補償すべく展開させたはず(と思わせた)ハッピーな(と思わせた)展開を、彼女はなんと再び、奈落の底に突き落とすのだから・・・。
この脚本家、鬼だ・・・。
何度そう思ったか知れない。そして同時に、何度、「次回も視なくちゃ」と思ったか・・・。
やっぱり、何だかんだ言っても上手いのだ。こちらは見事に転がされてしまう。すっかりハマってしまった証拠に、「そりゃあいくらなんでもヒドイだろ、無責任過ぎるぞ、キース!」とか思わず本気で呟いたりする・・・のって、やっぱりマズイんすかねぇ? まあ、マズイんだろうな・・・。
ともあれ、最終回にはやっぱり大団円を期待してしまう。いくらこれまで定石を逆利用して来たからって、最後の最後くらいはさすがに、ねえ・・・。
お願いしますよ、中園さん。