White Autumn

森博嗣 『四季 秋』を読了。

前作『四季 夏』までは、『すべてがFになる』の前史および序章だったのに対して、今作は、その事件から4年後、そして7年目の話。

いやー、とうとうここまで明示的に描かれちゃいましたか。全然気づいていなかった幸運な人たちは(いるのか?)、一体どれほどの衝撃を受けたんでしょうか。すでに気づいていた人たちはその人たちで、徐々に明示的に描写されていく成り行きを読みつつ、やっぱり興奮してしまったはずですし、(これから読む人たちは)してしまうことでしょう。いずれにせよ、S&MシリーズとVシリーズの両方を読んだ人なら絶対に楽しめるものになっています。

あの人とあの人が久々に再会しちゃうし(再会劇複数あり)、あの人とあの人がついに出会っちゃうし、(気づいていなかった人にとっては)あの人とあの人との関係がついに明らかになるんです。ただ、あれ、萌絵って、○○(男性キャラのファミリーネーム)と○○○(女性キャラのファーストネーム)の正確な関係を知らなかったんだっけ? 少なくとも、読者にはその情報は提供されてましたよね? あれ? それとも、その情報も実は例の「推測」によって得たもので、いつの間にかそれを当然の情報だと受け取っていたのか・・・?

――が、その一方で、残念ながら、どちらも読んでない人はおろか、シリーズの一方しか読んでない人にも、この衝撃と興奮を味わうことは出来ないでしょう(ただ、S&Mシリーズの方を読んだ人なら、あの人とあの人の関係の本格的な進展がようやく読めます)。確かに、『四季 春』ではかなり高度なミステリィ手法が使われていて、シリーズ未読でも(恐らく)充分楽しめたんじゃないかと思いますが、その次の『夏』、そして今作の『秋』と続けて、それ自体ではさすがに「ミステリィ作品」とは呼べないものになっていて、正真正銘の「外伝」なので、独立した小説として果たしてどこまで、どのように楽しめる余地があるのかは、ちょっと興味がありますね。

しかしそれにしても、次の『冬』では一体どうなっちゃうのか、期待が高まります。僕の予想では、今回の話しの流れからすると、アノ作品へのリンクを示唆するような展開になった所で終わるんじゃないかと・・・。だとしたら、その構想の壮大さに恐れ入ってしまいそうです。そして実際、この予想は当たっている気がする・・・。