直角取っ手の陰謀

親子丼やカツ丼などを作る時に使う専用鍋ってありますよね?

そう、鍋部分が丼と同じ大きさで、そこから取っ手がほぼ直角に付いている(以下、「直角取っ手」)、あの鍋です。

それを使ったことがある方、特に、長年使い続けている方にお訊きしたんですが、あれってホントに使い易いですか?

少なくとも他の鍋を使うよりも「便利だ」と思われます?

――ホントに?

そもそも、親子丼であれカツ丼であれ、通常は仕上げに溶き卵を流し入れることになるわけです。で、その際には、卵の入った容器を鍋の上でグルッと回す作業をする必要があるわけです。でも、この鍋にはこの作業をするにあたっての重大な障害があるわけです――直角取っ手という名(いや、この名前は僕がここで便宜上呼んでいるだけなんですが)の障害が。

これがあるおかげで、容器を上手く回しづらいんです――少なくとも僕は。ですから、まずここでお訊きしたんです。この鍋を「便利だ」と思って使っている方は、一体どうやって溶き卵を上手く回し入れているんでしょうか、と。

次に、どうにか出来上がった丼物の上層部(だって他に何て言ったら良いか分からないんだもん・・・)を、丼に盛ったご飯の上に移す必要があります。で、その際には、鍋を傾けて、やや小刻みに揺するようにしながら徐々にご飯に被せて行く作業をする必要があるわけです。でもこの鍋には、この作業をするにあたっての重大な障害があるわけです――やはり、直角取っ手という名(以下、同文)の障害が。

これがあるおかげで、丼物の上層部を上手くご飯に移しづらいんです――少なくとも僕には。特に、腕を不自然な方向に曲げなければならないんです。ですから、やはりここでもまたお訊きしたんです。この鍋を「便利だ」と思って使っている方は、一体どうやって丼物の上層部を上手くご飯の上に移しているんでしょうか、と。

以上の二点は、丼物の上層部を作るにあたって特に重要な作業だと思われます。そして、丼物調理専用の鍋を作るということは、他の鍋を使うことに比べてこれらの作業が格段にし易い鍋を作るということに他ならないはずです。ところが僕に言わせれば、この鍋は比較的作業がし易いどころか、むしろ、敢えて使いづらいように工夫されているんじゃないかとさえ疑いたくなります。もし今、宇宙人だか何とか人だかの陰謀が密かに進行しているんだとしたら、それにはきっと、この鍋を開発して販売ルートに乗せ続けている組織が一枚噛んでいるはずです――間違いありません。

面白い冗談はさておき、いやホント、どうしてこの種の鍋が淘汰されないですでに一般化すらしているのか、実に不思議でなりません。取っ手の角度をもっと下げてくれるだけで良いんですけどねえ・・・。75度くらい(?)のものが多いのかも知れませんが、中にはホントにホントの直角、90度についているものさえ見かけました。一体何を目的に作られたものなのか、心底悩んでしまいます。もしかしたらこれ、実は丼物調理用ではなく、ホントに全く別の目的のために作られた鍋なのかも知れませんね。もしそうだったらごめんなさい。詳細な用途ならびに使用方法をご教授いただけたら幸いです。