もはや不定期連載?――架空請求詐欺3たび

またまた葉書が来ました。もうわざわざここに書くことも無いかとは思ったのですが、2003-12-07の記事が予想外の大反響を呼んだ後も、どうやら依然として詐欺被害に遭われている方々がいらっしゃるようなので、やはりなおもしつこく「晒し」を続けることにしました。

ちなみに、そこのコメント欄に次のような投稿がありました。

渇!! 『こちらは、(株)関東債権処理組合です。どうして貴方方はそんなひどいことをするのですか?警察と暴力団に追われる羽目になりました。私どもは逃げるしか有りません。極寒の中お金も有りません。少々のイタズラ位なら我慢できました。でも警察幹部クラスの自宅や広域暴力団の幹部クラスの自宅又国家公安委員会の幹部クラスの自宅に切手を貼らずに当社の葉書をコピーして送りつけるのはチョットひどいやり方です。卑怯です。しかも執拗に。イタ電,メールにも困惑致しましたがイタ葉書には本当に迷惑しました。皆さん大人だったらもっとフェアーに行きましょうよ。あまりにもえげつないです。私どもは絶対納得出来ません。許せません。そんなことをする人には同じ事が自分に降りかかります。二度としないで下さい。私たちはこれで生計を立てています。日本は職業の自由が約束されています。憲法を踏みにじってそれでも貴方たちは日本人ですか?絶対恨みます。』

本当に関係者なのかどうかは定かではありませんが、もしそうなら絶句ものです。
それはもう、一文ごとにツッコミを入れて行きたいくらいなんですが、ネタ(いわゆる「釣り」)という可能性も多々あるため(っていうか、寛大の原理を適用するならむしろそう考える方が自然でしょう)、敢えて触れないことにします。
各自で思う存分ツッコんでやって下さい。


さて、今回の組織は「(株)近未来ネットワーク」を名乗っています。新手でしょうか。ますますネーミングが悪化して行っているような気が・・・。

住所は「東京都千代田区丸の内4丁目1-2」となっていますが、丸の内は3丁目までしかないようですので、恐らくデタラメです。その証拠に消印は「品川」・・・。二つの区が隣り合っているなら、(郵便局までの距離の関係で)まああり得ることかもしれませんが、でも実際には港区が間にしっかりと挟まっています。

ということで、例によって例のごとく、全文をどうぞ。

最 後 通 告

 こちらは近未来ネットワーク未納料金回収課の金本 優香と申し上げます。今回、弊社が去る平成15年10月に貴殿に送付した請求書についての料金が平成16年3月22日の時点でいまだ未納となっているということで当社の顧問弁護士のユニバーサル法律事務所の中村 和明弁護士に法的手続きの相談をさせていただきました。
 さらに、東京都消費者センターにお支払い方法についても相談した結果、法的手続きの前にお客様にもう一度ご請求をしたのち、最終期限までのお支払いか誠意あるお支払いのご相談がない場合、法的手続きをするよう指導を受けました。
 最終期限までに一刻も早いお支払い又は分割などのご相談を必ずいたすようお願いします。現在の料金を下記に記しますのでご覧ください。


¥ 274,500  也


 尚、返済期限は平成16年3月26日となっておりますので期日までに確実にご連絡ください。お支払い方法及び、分割などのご相談につきましては下記の当社お客様担当まで直接お電話していただくようお願いします。


(株) 近未来ネットワーク

代表番号                          03-3982-5524
担当 葛西                        080-3622-5662
料金回収課                         03-5950-6721

それにしても、一体何が悲しくて毎回こんなしょーもない文章を打ち込まなくちゃならないのでしょうか。

「金本 優香と申し上げます」って・・・申し上げちゃったよ!

さすが「近未来」の方は違います。どうやら現代人とは言葉遣いが異なるようです。

「・・・分割などのご相談を必ずいたすようお願いいたします」もそう。「いたす」は、少なくとも現代の語法では、「自分がすることについて謙って述べる言い方」のはずですが、どうやら近未来では、「相手がすることについて敬って述べる言い方」として用いられているようです。

それと、「未納料金回収課」なんてそもそも一介のインターネット関連会社に設置されているのかという疑問も生じるわけですが、「すぐやる課」なんていう部署を設置している役所もあるくらいですから、必ずしも虚偽だと断定することも出来ないでしょう(もちろん冗談です)。

それより、今回の文書の特徴の一つは、やたらと固有名を羅列している点にあると言えます。

まずは「金本 優香」。いかにも取って付けたような名前ではありますが、でもまあ、実際にこういう名前の人が居ても何らおかしくはないこともまた確かでしょう。変なのはむしろ、企業としての未納料金回収を一つの課の個人の名前を出して行う、という点です。そこへ来て女性の名前。明らかに何らかの意図を感じざるを得ません。

「ユニバーサル法律事務所」ってのも、いかにも「近未来ネットワーク」というネーミング・センスの持ち主が考え付きそうな名前です。今回の件とは無関係な同名の法律事務所が実在する可能性は充分あり得ますが。さらには、ご丁寧に弁護士個人の名前まで出しています。これまた、今回の件とは無関係な同名の弁護士さんが実在する可能性も充分あり得ますが。

そして何より極めつけは、「消費者センター」の名前を出している点です。敵は、こうした覚えのない「請求書」が届いた人たちは消費者センターに相談する傾向にある、という事実を逆手に取っているつもりなのでしょう。「今回の通告はそもそも当の消費者センターからのアドバイスを受けた上でのことらしいから、改めて相談しても無駄なんだろうな」という印象を植え付けることで、予め逃げ道を塞いでしまおうと企んでいるわけです。卑劣極まりありません。

それから、確かに去年の10月にも「請求書」は届きましたよ――「株式会社テクノグループから(2003-10-23参照)。何か関連があるとでも? 関わっている人間の何人か、あるいは少なくとも名簿は、もしかしたら同じであるかもしれませんが。でも、仮にそうだとしても、10月の文面で言われていたようなこと(期限内に支払わなければ法的手続きを取る)は一切為されていませんので念のため。(ただ、今回の請求金額が前回の金額に適度に(?)上乗せされているような数字なのが実に心憎い。)

あと、「尚、返済期限は・・・」って、なにゆえ「返済」? 「未納料金」の「支払い」を「請求」していたんとちゃうんかい! 設定が実に曖昧で、いい加減さの程が分かります。

何はともあれその「期限」とかいうのが葉書の届いた翌日、というのもすでにお決まり。

最後に、今回の文書のもう一つの特徴は、何が何でも電話連絡を催促している点でしょう。

でも、もはや言うまでも無いことですが、絶対に電話をしてはいけません(明確に反撃の意図と手段とを持っている場合を除いては)。

・・・ああ、しんど。