双六と人生
同じ日の帰り。
自宅の最寄り駅(仮にB駅と呼ぶ)には準急や急行が停まらないため、一つ手前のA駅で一旦降りて、各駅停車の電車に乗り換える必要がある。ところが、ヘタにボーッとしていると、いつの間にかB駅を通り越してC駅まで来てしまうことがよくある。誰でも、少なくとも一度や二度はやったことがあるはず。
この日もやってしまった。
実は、お間抜けにもちょうど2週間くらい前にもやってしまっていたのだが、加えて真夜中のことだったため、運悪く、C駅からB駅方面に向かう上り電車がすでに終了していたのだった。泣く泣くタクシーを利用して帰宅。あまりにも痛い出費だ。折角、その日の飲みは奢って貰えてラッキーだと思っていたのに、それですっかりチャラに・・・。どういうわけか、乗り過ごすのは結構決まって終電時だったりする。何度この駅からタクシーを使ったことか・・・。
そんなこともあって、何とも自分の情けなさに涙が出そうになりかけた。ただ幸いなことに、今回は上り電車が充分にある。C駅で降り、線路を隔てた反対側のホームへ渡ると、ちょうど上りの電車が来ていた。躊躇うことなく乗り込むと、間もなく発車。するとそこに、車内アナウンスが。
「この電車は、準急***行きです」。
・・・・・・。
再びB駅通過。
降りるべきB駅が猛スピードで目の前を過ぎ去って行く。むなしい。情けない。窓ガラスに映る自分の姿さえ見たくない。
「ああ、これって何かに似ている」――どうやら、呆然とした頭が知恵を絞って現実から逃避しようとしているらしい。でも確かに、双六のゴール一つ手前で「2」の目を出してしまった時に似ている、と思った。
そうか、「人生なんて双六みたいなものだ」ってこのことだったのか(絶対に違う)。