期待は壊れたね・・・。

Φは壊れたね』読了。

ちょっとした中編密室ネタ(?)を、意味ありげなクールなケレン味でもって理系学園モノに仕上げるというお馴染みのスタイルを維持しながら(このタイプの作品を書き慣れ過ぎた著者ゆえに)ほとんど惰性で書けてしまった、単なる場繋ぎ的な作品といった印象。

エピグラム(的引用)に『論考』を持って来るほどの内容なのか・・・。それこそ、単に意味ありげな、つまりミスリーディングな「重みづけ」に過ぎないんじゃないか・・・。まあ、「ミスリードするのがミステリィ(or ミスリードされるのを楽しむのがミステリィ読み)なんじゃないのか」と言われれば、確かにその通りではあるんだけど・・・。

というわけで、シリーズ第一作目がこれでいいんですか? 正直、さすがの川平慈英だって「いいんですっ!」とは言えないと思う。

何しろ、これまでの作品に比べて特にインパクトのあるキャラクタも設定もストーリー展開も見受けられない。「何か森博嗣の新しい試みが始まりそうな予感・・・」は、少なくとも今作からは一切感じられない。

今作は新シリーズで活躍することになるキャラクタ紹介に過ぎない、と言ってみたところで、ホントにこいつらだけでシリーズを引っ張って行けるのかと心配になってしまうほど、気になるand/or魅力的なキャラクタが居ないのだ。S&Mシリーズでお馴染みのキャラクタたちも出て来たけど、それこそ皮肉にも、新キャラクタたちだけには任せておけないってことの証左になってしまっているのでは?

この新シリーズ、「Qシリーズ」と呼ばれているというのをどこかで見たんだけど、だとすると、恐らくあのキャラクタが今シリーズを通じての主人公(いわゆる探偵役)ってことなりそう。しかしホントにそうなんだとすると、あまりにも芸が無いというか何というか・・・。そこは何か仕掛けがあるのでなければ、ハッキリ言ってもう終わってる・・・。ただ、今のところ、例の意味ありげな登場人物だけが唯一期待を持たせてはくれているけど・・・。

今後、この平凡なキャラクタたちの「ツテ」で、一体どんな突飛な場面や状況設定があり得るのか、まだ想像もつかない。少なくともそうした場面ないし状況設定に関しては、S&Mシリーズのキャラクタたちの「ツテ」に依存しまくることになるんじゃないかと勝手に予想してはいるんだけど、あるいはもしかすると、このキャラクタたちの中で実は意外な「ツテ」を持っている人がいて・・・なんていう展開もあり得るかも。でもまあ、そんなことは単なる一読者が考えることではなくもちろん著者が考えることなので、お任せするしかないんだけど。

しかしこういうのって、見切り時を見極めるのが難しいんだよなあ・・・。「次は来るかもしれない・・・ダメだった・・・でもその次は来るかもしれない・・・」という感じで、一種のギャンブル的な中毒症状に近いのかも。厄介だ・・・。