『ハウルの動く城』

http://www.howl-movie.com/index.html

ジャパニメーション界の三大巨匠(?)の作品が一挙に公開されるなんて、来年はとんでもないことになりそうだ!」との期待と共に始まった今年、押井守監督作品『イノセンス』、大友克洋監督作品『スチーム・ボーイ』に引き続いて、とうとうその最後を飾る作品が公開されてしまった――宮崎駿監督作品『ハウルの動く城』。

イノセンス』は、意外と悪く無かったと思う。虚仮威しの「難解さ」に惑わされない限り、別段難解なこともなく、純粋にストーリー・SFアニメとして楽しめた。『スチーム・ボーイ』は、以前にも書いたのでノーコメント。でもいずれにせよ、残念ながら「個人的に爆発的な大ヒット!」という域には至らなかったことに変わりはない。でもでもでもでも、さすがに宮崎監督ならやってくれるに違いない――とは、かつてなら無条件に期待出来たかもしれない。

ところが残念ながら、最近は必ずしもそうも行かなくなっていた。

たとえば『もののけ姫』は、漫画版『風の谷のナウシカ』風味を添加した上での映画版『風の谷のナウシカ』の焼き直し的作品といった印象で、決してつまらなかった訳ではないけどどこか説教臭くてエンターテインメントに徹し切れていない感は、高畑勲監督作品『平成狸合戦ぽんぽこ』を観た時に感じるそれに近いかも。『千と千尋の神隠し』は、どういうわけか外国で某賞を受賞したようだけど、実は完成度としてはこれまでの作品に比べて格段に落ちるような気がする。「日常世界から見知らぬ世界へと迷い込んだ主人公がそこでいろいろ経験してまた再び日常世界へと戻って来る」という最も安直な基本線を採用していることだけならまだしも、ストーリーの軸となるべきその「見知らぬ世界」での出来事のとっちらかりようはいささか目に余る。いろいろなキャラクターや設定を出すだけ出して、次々とエピソードを重ねては行くものの、そうしたキャラクターや設定がその中で上手く活きているようには思えず、恐らくはそうした印象を強く持ったがためなのだろう、その都度その都度思い付きで作られたエピソードやシーンを繋いでいるに過ぎないように感じてしまったわけだ。ラストのあの唐突さこそがその証左だと言えるかも。ストーリー進行上重要な「盛り上がりパート」に関してもそう。カオナシやハクがその「担当」だと言って良いと思うが、どうにも彼らは(これまでのストーリーの流れにとって)唐突に暴れたり勝手に(!?)苦しんだりしていて、主人公の千尋はなぜか(主人公ゆえに?!)それに積極的に関わっていく――観客側としては、この辺りで置いてけぼりを喰らわされてしまうのだ。またこの作品には、これまでの作品中で使われた「ネタ」や「パターン」がいくつか出て来る。だからこの点だけを取ってみても、「つぎはぎ」感は一層強くなる。

前置きが長くなったけど、最新作『ハウルの動く城』を観賞した感想は・・・。

ビフォー:「作品自体の出来には恐らく一定以上の期待が持てそうなんだけど、唯一キムタクの声だけが心配・・・」
アフター:「キムタクの声は思いのほか健闘してたけど、逆に作品自体が・・・」

――かなり劇的

大枠は『千と千尋』の域を出ていない――特に、いろいろなキャラクターや設定を出すだけ出しておいて、それらがストーリー上に全く活きていない点なんかは完全に。そしてまた、ラストの処理の仕方やその唐突さなんかも。さらに、差し支えない程度に具体的(?)な点を挙げるなら、ハウルとソフィーがそれぞれハクと千尋に重なるし、いくつかのキャラクターがソフィーにぞろぞろくっついて行く状況だって千尋の場合と全く同じ。これまでの作品中で使われた「ネタ」や「パターン」がいくつか(も!)出て来る点は、やはり「つぎはぎ」感を強くさせる。

言いたいことはもちろんまだまだあるけど、言えば言うほど哀しくなりそう(それに、具体的な内容にも触れざるを得なくなりそう)なので、これ以上は自粛。『千と千尋の神隠し』を楽しめた人、あるいは、これまでに宮崎作品をほとんど観たことがない人なら、それなりに楽しめるかも――とだけ付け加えておく。

(追記:他の人の感想を読むと、「みんな感想書くの巧いなあ」とほとほと感心してしまう。僕自身も感じたこと・書きたかったことが、実に的確かつコンパクトに書かれているものがいくつかあって、ちょっとヘコむ。)