『新幹線大爆破』

乗客1500人を乗せた新幹線ひかり109号に、時速80km以下に減速したら爆発する装置が仕掛けられた! 身代金を要求する犯人グループと、警察および鉄道公安局(?)との駆け引きの行方やいかに!? 1975年に日本で制作された、傑作(と言って良いでしょう)パニック・サスペンス。この設定からしても、それからずっと後の洋画『スピード』の元ネタとなっているだろうことは明らか。「なんだ、日本にもこんな映画があったじゃないか」と思わせてくれる。出演者は豪華だし非常に見応えのあるエンターテインメント作品であるにもかかわらず、どういうわけか、今となってはすでに「知る人ぞ知る映画」と化してしまっているような気がする(単に僕自身が知らなかっただけ、という可能性もあるけど)。もっと一般的に広く知られていてもおかしくないはずなのに、どうしてなんだろう? 設定が設定だけに、当時、国鉄による全面協力を得られなかった(どころか、そもそも制作しないようにとさえ要請された!)らしいし、警察の相次ぐ失態を描いてもいるのだが、そうした事情と何か関係でもあるのだろうか?

2時間半という上映時間はさすがにちょっと長過ぎたような気もするが、結構引き込まれたお陰で、最後まで集中して観ていることは出来た。最近は何でもかんでも(観客側の集中力の関係とかで)2時間前後に収める傾向にあるようだけど、内容さえ面白ければ2時間15分や30分はある程度集中して観続けることなんて何でもないように思う。脚本も、最近つとに増えた感のある原作ものではなく、全くの映画オリジナルとのこと。犯人グループ側から、しかも彼らの差し迫った事情に同情的に描かれている点などは、(当時の?)日本らしいと言えなくもない。警察が彼らを割り出していく過程も、比較的丁寧に描かれている。以後、このタイプの作品はメディアの種類を問わず多く産み出されているように思うが、個人的には、(小説だけど)東野圭吾『天空の蜂』講談社文庫)を思い出してしまった。ちなみにこの小説、「個人的に是非映画化して欲しい作品ベスト3」に入っていたりする(ただし、やるなら最低でも2時間15分くらいで)のだが――それはさておき。

その犯人グループのリーダーを演じているのが高倉健。でも彼ったら、相変わらずセリフ廻しが一本調子。確かに、表情や佇まいには独特の得難い雰囲気があることは認めるけど、でもこのセリフ廻しだけはどうしても受け容れ難いものがある、と前々から思っているんだけど・・・。顔と背中で芝居する俳優――なんだろうなあ。