『古畑任三郎ファイナル』――第2夜「フェアな殺人者」

「古畑祭り」2日目――今回は、イチローが本人として、それも殺人犯として登場したという話題性がこそがすべてだったかな、と。

殺人トリックとしても地味だった、というより、よくよく考えてみると(犯人であるイチローが)ほとんどトリックらしいことは仕掛けていないことに気づく。いわゆる「フェアー・プレー」の精神に則った上でのことなのかもしれないけど、でも、そもそも今回のポイントであったはずの「フェアーな殺人者」というアイディア自体が、残念ながら全体を通してさほど上手く活きてはいなかったような印象が強い。

だって、本当に「フェアー」にするんだったら、そもそもの最初から被害者の身分を示す物をすべて隠すなんてことをするのはおかしいのでは? それでいて、ワンサイド・ゲームにならないように敢えて手掛かりとなるものを残しておいて「フェアー・プレー」なんて言われても、ちょっとちぐはぐで納得出来ないと思いません? しかも、その手掛かりを辿って自分に行き着かれた挙げ句、古畑に被害者を知っているかと尋ねられ、「嘘は嫌い」とかで「知っている」と白状することになるんだったらなおのこと。

犯人であるイチローを最終的に追いつめる証拠も比較的地味で、それが繰り出された時の「あっ!」という驚きがあまりにも薄過ぎたのが残念。しかもその際のやり口も、古畑自身が宣言した通り「フェアー・プレー」なのかどうかは疑問。それに則っているのは、「あなたが犯人ですか?」とは直接聞かないという一点だけで、それ以外のやり口自体としては、強いて言うならやっぱりちょっと汚いような気も。

万事がそんな感じで、全体を通じて無理があった――というより、どの作品にも多かれ少なかれ見られる(許容範囲の?)無理が、今回はあまりにも無理として目立ち過ぎていた(ちぐはぐ感が露骨だった)、といったところか。

というわけで、個人的には今回の見所は(イチローの芝居を除けば)、源さん、もとい、向島くんの、イチローとの関係を含めた様々な境遇と、第1夜に比べてだいぶ「戻って来た」感があった西村・今泉、でした。イチローの芝居は、素人なりに良くやっていたとは思うけど、さすがに発声がキツかった。所々声がのどにつっかえる感じで、ほとんど聞き取れないセリフさえあった。さぞ音声さん泣かせだったのではないかと推察されます。