『WEEKEND BLUES [DVD]』

というわけでこれが、内田監督がPFFアワード2002に応募した作品。素人時代の自身が脚本、監督、出演(主役じゃないけど)をこなし、他の出演者、スタッフたちも会社人(「社会」の打ち間違いじゃありません)だったり主婦だったりの完全な自主制作。カメラワークや「間」はもちろん、芝居も正直結構キッツイけれど、まあそれはそれ、さすがにストーリーだけは充分に楽しめるものとなっています。

婚約者を他の男に獲られた挙げ句に自殺も諦めて、親友である健二の家に行った山本健介は、健二がネットで知り合ったあゆみという女性と付き合い始めたことを知る。健二はフリーター生活を改めて就職活動を始めるとのこと。健介は健二から「自信が出て幸せな気分になれる薬」を貰い、ヤケになって三錠、ビールと共に飲み干す。気が付くと、なぜか津田沼の片田舎の見知らぬ道に倒れていた――。健二の家に戻った健介は、自分には丸一日分の記憶が無いことを知る。そこから健介の記憶を辿る旅(?)が始まるのだが・・・・・・。

いくつかの「手掛かり」を元に記憶の無い一日の自分の行動を追跡し、こうだったのだろうと一応の納得が行った所で、突然記憶が戻る。そこで初めて、実は全くそうではなかったことが明らかに。このプロセスがいわばこの作品におけるアスペクト転換の部分となっている点で、「『運命じゃない人』の原点」が色濃く示されていると言えるかも。さらに、細かい伏線が随所に張られていることに感心。素人作品ならではのノリと演出なんだろうと高を括っていると、「あっ!」と言わされる。

実は健二役が内田監督自身なのだが、知らないと恐らく信じられないかも。こんな人が(失敬!でも観れば分かりますって・・・・・・)これほど緻密でコミカルで哀愁さえ漂う脚本を書いてしかも作品まで仕上げただなんて、全く想像だに出来ない。健介役の方も、当時から今に至るまでごく普通の会社人らしいんだけど、唯一この人だけは、センスを感じさせる芝居をしていたと思う。ちなみに、このDVDにもオーディオ・コメンタリーが付いていて、出演者たちによる裏話が聴ける。他に仕事を持っている人たちばかりだったため、撮影は週末にしか行えなかったらしく、時間も掛かるしそれに伴う苦労もあったらしい。だからこのタイトルは、作品の内容でもあるの同時に、恐らく製作者たち自身のことを表してもいるのだろう。内田監督は、「こんなマイナーな作品のDVDを観て、なおかつコメンタリーまで聴いてくれている人なんて果たしているんだろうか?」と言っていたけど、心配ご無用、ちゃんとここに居ますよ。