「作家でロシア語通訳者の米原万里さん死去」(讀賣新聞)

米原氏が卵巣ガンで闘病中だったことを知らなかったため、個人的にはあまりにも急な訃報で、かなりショックです・・・・・・。と言っても、そもそも井上ひさし氏が義弟だったことすら知らなかったんですが・・・・・・。

氏の作品はまだ2冊しか読んだことがありませんが、どちらもとても面白かったし、今まで全く知らなかった「時代」と「世界」とを本当に生々しく教えてくれたという意味で、非常に興味深かったことを覚えています。

氏が「徹子の部屋」に出演した際、黒柳徹子が『嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)』の一部を本当に可笑しそうに紹介しているのを見て、直後に思わず買いに走ったものでした――まだハードカバー版しかなかったのに。自身のプラハでのソビエト学校時代のエピソードを元に、「小説」としてもとても面白いし読み応えのあるノンフィクションもので、いわゆる「ノンフィクション」ものがどうも苦手な僕が、珍しく夢中で読み耽ったものでした。

オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)』は、同じようにソビエト学校時代の出会いと経験とを元に書かれたものでも、こちらは一応フィクション、つまり歴とした小説です。半分自身をモデルにしたような主人公が、長じてから、かつての先生だったオリガ・モリソヴナの強烈で印象的な反語法に隠された秘密を探る内に、当時の「時代」と「世界」とに翻弄されつつも懸命に生き抜いて来た1人の女性の姿が浮かび上がる――。読後は絶対、「オリガ・モリソヴナ」という名前が忘れられなくなります。

いずれにせよ、本当に惜しい才能を亡くしてしまい、残念でなりません。ご冥福をお祈りいたします。