『ラストサムライ』

またまた新宿に用事があったので、ついでに『ラストサムライ』を観てしまう。
実は渡辺謙目当てだったりする。
思えば、唯一全部の回を視た大河ドラマが『独眼流政宗』だったし、確か一昨年の年末(だったっけ?)に放送された十二時間連続ドラマ『壬生義士伝』でも号泣させられまくりだった(こちらはまあ、浅田次郎マジックのせいもあるだろうけど・・・)。

で、結果的にどうだったかと言うと・・・
うーん、テレビのスポットでは「渡辺謙がスゴイ!」とか出ているし、ゴールデン・グローブ賞にもノミネートされたらしいけど、正直、勿体ない「使われ方」をされてたなという印象。渡辺謙の魅力をまだまだ全然引き出し切れていない!と思う。

それどころか、ちょっとキツイことを言わせて貰うなら、悲しいかな、登場する人物の誰一人として魅力的だとは思えなかった・・・。
主役(トム・クルーズ)はおろか、肝心の(はずの)日本人俳優たちが演じた日本人たちでさえ、どうしても「記号的」にしか見えなくて、たとえば心情や行動の変移が、生きた人間のそれにしてはあまりにもぎこちなさ過ぎるように感じた。彼らは、やはり飽くまでも「外側から」描かれていたような気がする。つまり、描いた側が全然彼らの「内側に」入り切れていないのだ。だから日本人俳優たちは、その描かれ損ねた、いわば空虚な内側を演じなければならなかったのではないか。勝手に想像する限りでは、さぞかし演りづらかっただろうなと・・・。

また、いわゆる「史実」をヘタに念頭に置きながら観てしまったせいか、どうも、状況設定や人物設定を把握するのに時間がかかった。恐らくそのせいもあって、なかなか映画の世界に入っていけなかったのかもしれない。

「『勘違い』無しの日本を描いた初めてのハリウッド作品」という趣旨の評判も良く聞くけど、じゃあ本当に「勘違い」が無かったかと言えば、やはり必ずしもそうではなかった。ただ、そのこと自体は別に、作品の評価とは何の関係もない。だってそれを言うなら、日本で量産されているいわゆる時代劇の一体どれだけが「史実に忠実」、あるいは「リアル」だと言うのか。それらはどちらも、飽くまでも「昔の日本を舞台ないし素材にした完全なるフィクション」という点で全く共通している。

いずれにせよ映画全体の印象としては、正直なところ、「壮大なB級映画」の域を越えているとは思えなかった。これでも、とことん贔屓目に観ようとしてたんだけどなあ・・・。