邦画の上映時間と、『七人の侍』

実は、恥ずかしながら、今までに一度も観たことが無かったんです・・・。そこで先日、ふと思い立って、DVD版をレンタルしてようやく観賞しました。約3時間半もあったんですね、知らなかった。でも、途中に休憩さえ挟めば(この作品は、途中に「休憩」という文字が数分間表示される)、映画ってこれくらいの長さでちょうど良いような気がします。シネコンがやっているように全席指定にすれば、わざわざ荷物を置いたままにしたりせずに、安心して席を立てるでしょうし。どんなストーリーの作品でも無理矢理2時間前後で収めようという、近年の邦画業界に見られる傾向は、やはりさすがに無理があると思います。

内容的な深みを出すためのディテールをあまり描けない、あるいは、撮影はしたんだけど編集段階でカットせざるを得ない、さらにそれ以前に、始めから2時間前後で収まりそうなストーリーを選ぶ、などということによって、完成作品としての質が、良くても頭打ちになってしまいがちです。「上映時間がそれ以上になると、観客の集中力が続かない!」と言われるかもしれませんが、そもそも、ある程度の大人の集中力が持続する時間はせいぜい約90分程度らしいですね(現実的にはもっと短いとは思いますが)。仮に、上映時間が2時間だとしても、集中持続限度時間を30分もオーバーしていることになります。それに引き替え、上映時間を3時間、約半分の所で休憩を入れるようにすれば、ちょうど約90分ずつになるでしょう。観客側は比較的高い料金を払うわけですから、それくらいの時間楽しませて貰ってもバチは当たらないはずです(90分前後の作品を二本立てで上映するのと同じことです)。しかも、3時間の作品を作れるとなれば、製作側だってそれなりの意気込みになるでしょう。「ディテールを書き込む余裕が出来るからこういうテーマの作品も行けるかも」とか、「この小説を原作として2時間の映画にしてしまうのはあまりにもナンセンスだけど、3時間あればなんとか描き切れるんじゃないか」とかいうように、夢は膨らむ・・・んじゃないだろうかと勝手に(それこそ)夢想しています。

要するに、始めから2時間に収まる程度の内容のストーリーだけを採り上げようとしないで、あるいは、頑張って重厚ないし壮大な内容の(はずの)ストーリーを採り上げても、それを2時間程度で何とか無理矢理観せてくれようなんてしないで、もうちょっとじっくりと時間をかけて作り上げたものをもうちょっと時間をかけて観賞させて下さいな、っていうお話。

図らずも長くなってしまったけど、ようやく閑話休題

さて、肝心のこの映画(『七人の侍』ですよ、もちろん)、色んな意味で新鮮でした。

まず印象的だったのが、七人の侍の内の1人である片山五郎兵衛の役柄。かくも典型的なジャパニーズ・スマイルをたたえた侍(役)なんて初めて見ました。僕の持っていた侍概念が完全に覆りました。僕の中の侍概念と言ったら、恐らく多くの外国人たちが持っているだろうと思われるそれと、ほぼ同程度のものだったからです。もちろん、三船敏郎演じる菊千代のキャラの強烈さにはしびれました。

次に、何より驚いたのが、侍たちのいわゆる「殉職」シーンがちっとも劇的に撮られてはおらず、百姓が殺されるシーンとほぼ同じ扱いがされている、という点でしょうか。正直、普通に観ていても、いつ誰(どの侍)がどうやって死んだのかが分かりづらいほどです(僕だけ?)。でも、その演出が意図的なものであることは、ラストシーンでの勘兵衛のセリフからも明らかです。

細かく書いて行くと切りがなくなりそうなのでいい加減止めますが、最後に、「野伏せり(のぶせり)」という言葉が印象に残っています。いわゆる「野武士」のことなんですが、百姓たちはこう呼んで彼らを恐れているわけです――「野伏せり来るだ」。ちなみに漢字表記まで分かるのは、DVDだからです。つまり、日本語字幕表示が出来るんです。何ぶん古いフィルムなので、セリフが聞き取りづらいことが多々あるんですが、この機能があればバッチリです。

次は、『用心棒』『椿三十郎』に行く予定。

でもその前に、今は、意外にも(?)現在公開中の『下妻物語』が妙に気になっていたりします。

http://www.shimotsuma-movie.jp/

ロリータ・ファッションでキメて(?)行くと、なんと1,000円にして貰えるみたいです。どうしてもう一方のヤンキー・ファッションじゃダメなのかは、まあ、想像に難くなかったり・・・。