『g@me.』

『g@me.』を、例によって例のごとくDVDレンタルで観る。

http://www.game-movie.com/

なかなか悪くないサスペンス・ミステリィに仕上がっていたと思う。近年流行りの(?)変に意味深な分かりづらさを醸し出すような展開ではなく、分かり易くはあるけどその代わり先が読めないドンデン返しの連続、といった展開にしてくれているので、エンターテインメント性も抜群。藤木直人仲間由紀恵という典型的な美男美女を主演に据えることで、泥臭い現実味を良い意味で薄れさせてくれている。都内の(当時の)新興地をロケ地に多く選んでいることもあって、全体的にいわばスタイリッシュな作りになっていると言って良い。また、変に「現実問題」を絡めていかにも深刻なテーマを扱ってます的な「媚び」も、一切排除されている。

このように、良く練られた脚本が徹底的にフィクショナルな舞台上で展開されていることで、ストーリーのエッセンスを純粋に堪能することが出来る。そうした潔さは、1つ間違えば全体的な「薄っぺらさ」にも繋がりかねない諸刃の剣ではあるが、その点この映画の場合は、やはりその展開の妙が効いている。中盤までは比較的オーソドックスな展開に思えて心配になるが、実はそれは、そこからの急展開のための伏線に過ぎない。

内容からし軽快なコメディ調にしても良かったように思うが、基本的には比較的シリアスに進む。ただその中で、さすがフジテレビ製作だけあって(?)、小ネタだけは忘れない。仲間由紀恵に「ガッツ石松」と言わせる(そして本人も一瞬だけ登場させる)のは、『トリック3』(テレビ朝日系だけど)での「ガッツ石まっ虫(がっついしまっちゅう)」http://www.tv-asahi.co.jp/trick/02cast/ep01/guest08.html)繋がりだろう(穿ち過ぎ?)。そればかりか、藤木直人椎名桔平、それに「アンティーク(人形のHP)」と言ったらもう、何の捻りもないほど明らかに『アンティーク 〜西洋骨董洋菓子店〜』*1繋がり。結局、ガッツ石松椎名桔平も、単にこうした「繋がりネタ」のためだけに駆り出されている・・・かのよう。でもまあ、こうした遊び心も重要だ。

ところで、原作本は読んでいないのだが、特典のコメンタリーを聞く限りでは、どうやら映画版の方は、原作のラストからさらに展開させている模様。でも、それを聞いて正直驚いた。もし映画版も原作とほぼ同じようなラストであったなら、「ふーん」で終わっていたかもしれない。逆に言えば、原作の方を読んだら物足りなさを感じるのではないか。原作者の東野氏は、この映画のラストの展開をどう思っているのだろう(自身も出演していたけど)。

このラストの展開を「ちょっと分かりづらい」と感じた観客もいたようだが、実際にはそれほどでもないように思った。ちゃんと某登場人物の口を借りて(やや不自然なまでの説明的なセリフでもって)、その展開の事情を理解するのに必要な情報はすべて提供してくれていたはずなのだから。むしろ1つだけ不満なのは、このネタ(の表現方法)が、すでにサスペンス映画の古典的名作ともなっている感のある某洋画で使われていたものとソックリだ、ということ。「たまたま似てしまった」とは考えられず、やはり完全に意識していたように思う。せっかくなら、やはりオリジナルのネタで勝負して欲しかった。

いずれにせよ、全体的には、近年希にみる佳作だったことに変わりはない。

*1:どちらかと言うと不評だったらしいが、個人的には結構好きなドラマだった。