『CASSHERN』

http://www.casshern.com/

宇多田ヒカルの旦那」として話題を集めた(!?)紀里谷和明氏による初監督作品。『新造人間キャシャーン』の実写化作品――と言ってしまうのは世間的にやや憚られるが、個人的はアニメ版の内容を全く覚えていない*1ので、正直どちらでも良い

CGによる濃密な映像は、確かに一定の雰囲気を醸し出してはいるものの、あまりにもそればかりなので、次第に辟易として来る。反戦」(しかも時期的に、特にアメリカによる対イラク戦争に対する批判)がテーマとしてあまりにも露骨に前面に出過ぎているのもどうかと思う。

中盤のロボットの集団との戦闘シーンだけが色々な点でズバ抜けていて、全体からちょっと浮いている感じがしたんだけど、実際そのシーンだけは監督とは別の人が絵コンテを切っていたらしい――納得。そして、このシーン以降の長丁場をどう受け取るかが、恐らくこの映画に対する評価の分かれ目だろう。確かに長過ぎると感じたし、肝心の(はずの)キャシャーンはと言えば、対ロボット戦の時のあの勢いはどこへやら、ヘロヘロになりっぱなしで良いトコ無いし、ではあったんだけど、比較的早めに「ヒーローもの」として視ることは止めていたこともあって、それなりに引き込まれた部分もあった。

そこまでは我ながら寛大な目で観ていた(「酷評されてるけどそこまで悪く無いんじゃないか?」)と思うんだけど、そこへ来てあのラスト――正直意味が分かりませんでした。良く言えば「壮大で印象的」、悪く言えば「破れかぶれ」。こういうタイプの作品の落としどころとしては、そうならざるを得ないのか・・・。

でも、そのラストシーンの後、暗転してスタッフロール、それと同時に主題歌「誰かの願いが叶うころが流れる――少なくともこの部分の雰囲気は悪くなかった。「味の濃いものを食べ過ぎた後のさっぱりとしたデザート」といった趣で、やっぱり全体としてはそんなに悪くなかったんじゃないか、と錯覚させてくれるのが救い。とはいえ、これはむしろ宇多田ヒカルのおかげと言った方が良いかも。余計なお世話かもしれないが、編集し直したら結構観られるものになりそうな予感は、ちょっとだけする。

* * *

ところで、次回作は『タイムボカン――という噂はマジなんでしょうか。正気の沙汰とは思えませんが、その一方で、むしろある意味興味を惹かれます。『CASSHERN』と同じようなノリ(?)で作られれば作られるほど、「お笑い度」が増して行くものと思われます。ギャグ映画の最高傑作となることは間違いありません。今からDVD化が待ち遠しいです。

*1:再放送だったのかどうかは知らないが、視たことはあるはずなんだけど、なぜか全く覚えていない。『キャシャーン』に限らず、幼少期に視ていたほとんどのアニメやヒーローものの内容を覚えていないのが切ない。