『死に花』

老人ホームに入居して悠々自適な生活を送っていた老人たちが、穴を掘りまくって地底から銀行の金を強奪しようとする、というお話。世のお年寄りたちに、「老いては余生を受け身に過ごすんじゃなくて、元気と勇気とを出してまだまだ積極的に生きてみてはどうですか」というメッセージを活き活きと発している映画――と言って良いかも。山崎努宇津井健青島幸男谷啓藤岡琢也長門勇森繁久彌、といった出演者の面々がスゴイ。恐らく、映画館に観に行った人たちの平均年齢もかなり高めだったものと想像される。

そんな作品ということもあってか(?)、ストーリーの進行は結構のんびりしている。なにより、肝心の「計画」の話しが出て来るのがようやく(尺的に)中盤にさしかかろうとする所からなのだから、せっかちな人を映画に引き込むことは望めそうもない。その代わり、「老いる」ということや「自分らしく死ぬ」ということがじっくりと(でももちろん深刻ぶらずに)描かれる。ようやく「計画」に取りかかり出しても、サスペンスフルな展開はおろか、派手なアクション・シーンなどもちろん微塵も出ては来ない。でもその代わり、こんな老人たちが穴を掘り進めるということ自体に別の意味でハラハラ・ドキドキ。そして最後には、この計画の「真の意図」が明らかになる――。

地味と言えば地味だが、「青春活劇」の部類に入ってもおかしくはない良作。エンターテインメント映画一般としても、安心して観られるタイプの作品。普段、一緒に映画館に行くこともなっていた老夫婦が、久々に連れ立って観に行ってみる――そんな光景にピッタリな映画なのかもしれない。