『その場しのぎの男たち』

というわけで再び、そんな三谷芝居のDVDの1つをちょっと前に購入していて、これまた新選組!』最終回放送当日直前に届く。三谷氏が劇団東京ヴォードヴィルショーに書き下ろした作品『その場しのぎの男たち』を、劇団創立30周年記念公演として再々演したもの。この作品は残念ながら観に行けなかったので、是非とも観てみたかった。

http://www.vaudeville-show.com/index.html

明治24年、来日中のロシア皇太子を警備中の日本人警官が斬りつけた「大津事件」の起きた夜、ホテルの一室に総理大臣ら5人の大臣と伊藤博文とが集まって対策を協議するも、打つ手打つ手が面白いように裏目裏目に出てしまい・・・という、典型的な三谷シチュエーション・コメディ。三谷氏の作品で時代モノというとほとんどが幕末を舞台にしたもので、もしかするとこの作品が彼の唯一の明治維新後を舞台にした作品では――と迂闊にも一瞬思ってしまったのだが、そう言えば、同じ劇団東京ヴォードヴィルショーに書き下ろした作品で映画化もされた『竜馬の妻とその夫と愛人』もまた、明治維新後の作品だったことを思い出す。笑の大学』や『温水夫妻』は「時代モノ」には入りません、ていうか入れません。極個人的な定義により、「時代モノ」とはせいぜい明治時代が舞台の作品までを言うので――いや何となく。

それはそうと感想としては、大満足とまでは行かなかったけどなかなか面白かった。登場人物である政治家はみな正にタイトル通りの男たちで、こんなヤツらにホントに政治なんか務まるのかと思わなくもないが、むしろ実際にはこんなものだった(orである?)のかも。ただ、少なくとも客観的に見ている限りは、みな愛すべきオッチョコチョイばかり。どいつもこいつもキャラが濃い。伊藤博文役の伊東四朗(客演)はさすがの貫禄で、全体を程良い緊張と緩和で引き締めてくれていた。この役はダブルキャストで(それまではあまり知らなかった)山本龍二も演じており、DVD特典としてそのハイライトシーンが収録されていたんだけど、伊東四朗が演じているのを見てしまった後だったためか、今一しっくり来なかった。何というか、飄々とした性格を無理矢理作っている感じが伝わって来てしまって、どうも入り込めなかったのだ。伊東四朗のために当て書きされた役なんだから、仕方がないと言えば仕方がないのかも・・・。

DVD特典の華(?)と言えば、副音声コメンタリー。この作品では、佐藤B作、佐渡稔、あめくみちこ、の3人が裏話を語ってくれている。以前『下妻物語』のコメンタリーにダメ出し(って何様のつもり?)したけど、本作に関してはその対極にあって、ある意味、副音声コメンタリーの理想型の1つかも。なにせこの3人、劇団の中核メンバーだけあって気心が知れている同士であるためか*1とにかくよく喋る。芝居の流れとは直接関係の無いことに関しても盛り上がることはあるんだけど、肝心のポイントに来るとちゃんとそこを拾って話題に乗せてくれる。ホント、これからDVD特典を作る予定の関係者の方々には是非とも見習って戴きたいと思う。

*1:ちなみに、座長の佐藤B作とあめくみちこはご夫婦です(確か、『竜馬の妻・・・』前後にご結婚されたはず)。