『カレーライフ』

竹内真カレーライフ』(集英社)

もしかすると作者は、「カレーライフ」という言葉から逆にこの話を思い付いたんじゃなかろうか。まさにそんな文字通り「カレー人生」を送らんとする主人公の悩みと悩みと決断とを明るく軽快に描いた秀作。亡くなった父の誤解から、かつての祖父の店でカレー屋を始めることになった主人公は、いとこたちを誘うためにひょんなことから世界を旅するハメに。祖父のカレーの「秘密」を探る旅は、同時に彼らのルーツを探る旅でもあり、(「自分探し」と言うより)「自分作り」の旅でもある。富士山麓→(沖縄のはずが)アメリカ→インド→沖縄と舞台を移す、いわば青春ロードムービー風ノベル*1。そのせいか、「小説」というよりどこか「ドタバタ旅行記といった雰囲気さえ漂う部分もあって、それもまた最高に楽しかった。バーモントカレーの「本場」だと思い込んでいたバーモント州に、成り行き上バーモントカレーを伝導してしまう(!)エピソードなんか秀逸(でも、実際リンゴとハチミツは名産品なんですね)。これといった大々的な事件が起こるわけではないけど、その分、読んでいる間中どこかウキウキとした幸せな気分でいられる。いろんなカレーにも出会えて、絶対カレーが食べたくなる、というか作りたくなる。後半はちょっと、風呂敷のたたみ方がバタバタと忙しなくなってしまった感もあるけど、いずれにせよ、これは是非とも後日談を読んでみたい。それはそうとこの作品、どこかのテレビ局が夏休み特別企画か何かで、(最低でも)前編後編各2時間くらいずつの二夜連続スペシャルドラマにしても良いと思うんだけど、どうだろう? それこそ、子供から大人まで楽しめる「青春・カレー・ロードムービーになると思うんだけどなあ・・・。

*1:小説の場合は「ロードノベル」? あんまり聞いたこと無いけど・・・。