面倒なので3本まとめて

レンタル一本99円のキャンペーンを利用して、無理矢理3本借りてみました。

日本版公式サイトがあったと思しきURLはどこぞの出会い系サイトに取って代わられてしまったようなので、下記は本家のサイト。

http://www.sonypictures.com/movies/identity/

いやあ、大当たり! もしかしたら、これまでに観たサスペンス・ミステリィ系の映画の中でベスト級かも。これって公開当時話題になったっけ? 全く記憶に無くてノーチェックだったけど、手に取って大正解。あらすじを書こうとするとどうしてもアンフェアな記述にならざるを得ないと思うんだけど、やっぱり書いてあるところには書いてある。だから内容の紹介はそれらのサイトにおまかせ(責任転嫁)。ただ、内容の傾向だけでも強いて言うなら、日本人ミステリィ作家で言えば柄刀一の中編作品を彷彿とさせる。アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』的なシチュエーションが露骨に現出するが、このシチュエーションを使うことに対する意味づけがポイント。ラストのオチにもちゃんと意味(必然性?)があるってことに気づかないと、「さすがにちょっと狙いすぎ」といった否定的な印象だけを持ってしまう恐れも。それにしてもこの内容を90分でスッキリかつ充分に見せる手際はお見事。この「見せ方」もまた多分に効を奏しているのかも。その辺の舞台裏に関しては、DVD特典として監督と脚本家それぞれによる(!)音声解説が入っているので必聴。僕自身は、時間的な余裕が無かったため残念ながら全部は聴けなかったのが心残り・・・。

http://www.bewild.co.jp/keimusyo.htm

原作者である花輪和一氏の実録(!)漫画を基にした、崔洋一監督作品。この手の作品にありがちな、刑務官による暴力だ、囚人同士の抗争だ、告発だ、脱獄だ、といった要素一切無し。かと言って、日常社会から隔絶された非日常かつ過酷な環境の中に生まれる人間愛、罪を犯してしまったことへの後悔、家族に対する懺悔、といったテーマを扱った「お涙頂戴」系でさえもない。主に、山崎努演じるハナワの視点から見た刑務所生活の、小さなエピソードとも言えないようなエピソードを積み重ねた作品。実に静かで牧歌的な風情さえ漂う。実社会での生活に疲れたら1週間程度なら入ってみても良いかな、というイケナイ思いがふと頭をよぎる。その意味では、作品の雰囲気自体には似合わず、実は結構「キケン」な作品なのかも。誰がどこで書いていたのか定かではないが、この作品のもう一つの見所は、皮肉にも「自由の制限された環境でこそ際立つ個性」だ。実際、登場する囚人たち一人一人のキャラクターは実に個性的で、ヘンな言い方だが、どこか愛嬌があって憎めない。全体を貫く縦軸としての役目を果たすストーリーがあるわけではないため、見終わった後に大なり小なりカタルシスを求める向きは、映画館で観たなら不満を感じるかもしれない。僕自身もそういう傾向にあるとはいえ、幸いにもDVDで観たせいか思いのほか楽しめた。

http://www.warnerbros.jp/mysticriver/

クリント・イーストウッド監督作品。アカデミー賞2部門獲得ということで話題になったとはいえ主演男優賞と助演男優賞で、作品賞や監督賞、脚本賞といったいわば内容自体に対する賞ではなかったようだ。それもある意味、納得。内容的な評価は実にビミョーだ。あるトラウマを共有する(正確には違うけど)幼なじみの3人の運命が25年後、再び交錯し、悲劇の結末へ・・・。ド派手なアクションものでも大々的なお涙頂戴ものでもない、どちらかと言うと骨太感のある「人間ドラマ」的な作りになっているところが、皮肉にもちょっと新鮮に感じられたり。フーダニット的な見せ方になってはいるが、飽くまでもそれは見せ方の1つの手法に過ぎない。あんまり「ミステリィ映画」を期待し過ぎてもどうかと思う。また、制作側の意図していたらしきテーマは、観客側には上手く伝わりづらいような気がする。1つには、どうも焦点がぼやけているように思える点。このタイプに限らず「物語」には「どの視点から見るか」が非常に大事だが、本作品ではそれが分散してしまっていた感があり、結果、テーマもぼやけてしまったのかも。もう1つは、ラストの後味の悪さ。仮にそれ(反発を感じてもらうこと)が制作側の意図だったとしても、こうした不快感を感じさせられた後で映画自体を肯定的に評価することは難しい・・・。たとえば「運命の残酷さ」を描くにしても、最後に涙に昇華されるような作りになっていればまた違って来るだろうが、この作品はむしろそれを拒んでいる感がある。評価が分かれるところだろう。