『サマータイムマシンブルース』

CO-RE2005-09-13


(キーワード・リンクの都合上、一応、『サマータイムマシン・ブルース』と中黒ありバージョンも表記しておきます。)

http://stmb.playxmovie.com/

「今日と昨日だけをひたすら往復する」とか「タイムマシン ムダ遣い」*1とかいうフレーズだけで何だかシビれてしまってスッゴク気になってた作品。関東ではまだ渋谷アミューズCQNでしか上映していないようなので(ホントか?)、観たいなら渋谷に行くしかない。で、ちょうど渋谷のパルコ劇場での観劇予定日が近かったため、二回出向くのは面倒くさいってことでいっそのこと掛け持ちを強行することに。つまり、一日で映画と芝居の二本立て。ちょっと贅沢な気分。

気になっていた某ラーメン屋にも寄るつもりだったため、まず最初に映画のチケットを買っておくことに。整理番号制なので、その方が安心。劇場のHPによると、(本編の内容に関連して)クーラーのリモコンを持参すれば1,000円に割引されるということだったので、そのサービスをやっているか一応確認してから、おもむろに(エアコンのだけど)リモコンを取り出す。まあ、確かにちょっとこっ恥ずかしかったけど、でもその甲斐あって、もちろんちゃんと割引に*2。その時、「もしイヤだったら断っていただいて結構なんですが」との前置きの後、何かと思ったら、「リモコンを持参していただいた方の写真を撮らせていただいて、そこに、もしタイムマシンがあったら何をしたいかというコメントを書いていただいているんですが」――お言葉に甘えて速攻で却下。すいません、恥ずかしさの上塗りをさせるのだけは勘弁して下さい・・・・・・。

それから某ラーメン屋に直行。味は好きな方だったけど、スープがちょっと胸やけしそうな「濃さ(コク?)」だったのが玉に瑕。昔だったら全然問題無かった・・・・・・のだろうか。それはさておき、そそくさと劇場に戻る。さっきは気が付かなかったけど、実際に撮影に使われた「タイムマシン」が展示してあった(写真)。そのポンコツさ加減が逆にソソる。なんかグイングイン動いてるんですけど。客入れが始まるも、そんなに客数は多くなかったため、ほぼド真ん中に陣取ることが出来た。

で、感想は――いやあ、面白かったあ! 期待通りの「おバカ」さ加減に、期待通りの「辻褄合わせ」(伏線張り&回収)具合。確かにこれは、「タイムトラベルもの」史上最も下らないタイムマシンの使い方だ。この、SFという一見華やかな舞台装置を使いながらも、どこまでも飽くまでも日常の中でせせこましく動き回ることに徹するユルーイ感じは、実にニッポン的。そういう意味でも、「ニッポンのSF映画」の代表作がようやく誕生したと言っても過言ではないでしょう――多分*3

SFなんて研究したこともないどころか、そもそも「SF」って何の略だかも知らないノー天気でおバカな「SF研究会」のヤツらが、ナゼか部室に置いてあったタイムマシンに乗って、壊れてしまった部室のクーラーのリモコンを取り戻すべく、昨日に戻って壊れる前のリモコンを取って来ようとするのだが――。正確には、タイムトラベルが為されるのは「今日」と「昨日」の間だけじゃないんだけど、それはさておき。前半はちょっとテンポが悪いと感じさせる部分もあっていくらか退屈さを感じないこともなかったものの、一旦話しが転がり始めると後はもうラストへ向けててんやわんやの一直線(!?)。ただこういう作品の場合、この前半の感じは決して失敗なんかじゃなくて、それなりのちゃんとした理由がある。そこで展開される、一見良く分からない、大して脈絡もありそうにないちょっと意味不明なシーンは、そのことごとくが後で「繋がって」くる重要な伏線なのだから。そしてこういう作品では、「ああ、そういうことだったのか!」と膝を打つことこそが(いや、別に実際に打たなくても良いけど)最大の楽しみの一つだったりする、と断言したい。本作でももちろん、そんな場面はいくつもありました。というよりむしろ、その効果を出すことにトコトン徹した作品だとさえ言って良いかも。そのエンターテインメント精神がまた最高。DVDが出たら絶対にもう一度(以上)観たい。そうしたら多分、前半だって各シーンの隅々まで楽しめるはず。役者陣も実に活き活きと「愛すべきおバカたち」を演じていて、画面からも楽しさがビシバシ伝わって来る。

原作は、「ヨーロッパ企画」という小さな劇団の舞台劇らしい。寡聞にもこの劇団は知らなかったんだけど、どうもこうした、ドタバタ・コメディでありながらもその実、筋は緻密かつ理知的に構成されている、「ドタバタ・ロジカル」*4な作品を上演している劇団らしい。素晴らしい。最近東京公演があったらしいんだけど、知るのが遅過ぎた・・・・・・。「らしい」ばっかりだけど(でもその内の一つは違う「らしい」だけど)、次の機会には必ず実際に舞台を観てみたい。

そして監督は、『踊る大捜査線』でお馴染みの本広克行。そう言えば、ジョビジョバの舞台劇(っていうかコント?)が原作の『スペーストラベラーズ』(設定や途中までの展開は好きだったんだけど、ラストがちょっと後味が悪くて個人的には今一つノリ切れなかった)も本広監督だった。この人にはこれからも是非、こうしたマイナー(だった?)劇団の面白い作品を発掘して世に知らしめる企画を手掛けていただきたいものです。どうでも良いけど、『サマータイムマシンブルース』で使われていた上下分割画面は、やっぱり『踊る』(の劇場版だったっけ?)を彷彿とさせました――シーンのタイプや求めている効果自体は全く違うんだけど。

ということで、恒例の、「長くなったので続きは次回」。

*1:これ、公式HP上には見当たらないようだけど、どっかで見た。一番ビビッと来たコピーだけに、公式HPで使わないなんて勿体ない。

*2:ただ、こういうサービスって決して珍しくなくて、たとえば、『下妻物語』の時はロリータ・ファッション(ヤンキー・ファッションじゃダメだったんだろうか)で来場したら割引とか、『マシニスト』の時は枕持参で割引、なんてサービスもあった。残念ながら個人的にはどちらも決行しなかったけど。

*3:ちなみに、「ニッポンのミステリー映画」の代表作はと言えばもちろん、そのものズバリ、『12人の優しい日本人』。その他にも、「ニッポンの恋愛映画」とか「ニッポンの戦争映画」とか、挙げれば色々あるんでしょうが、特に興味はないのでどなたか興味のある方にお委せします。

*4:勝手に命名してみましたが、個人的には結構お気に入り。