とりあえず2本

奥田英朗の同名小説を映画化。伊良部役は松尾スズキで、原作のイメージとは全く違うだけど、でも結構適役かも。そもそも内容からしてかなり変えてあるし。脚本自体がすでに松尾スズキへの当て書きになっているような雰囲気。結果として、原作よりイイ感じに仕上がっているような気がする。原作ものの映画化って大概、「原作の方が面白い」ってことになりがちなんだけど、この作品に関しての個人的な感想は全く逆で、(個人的にも)ごく稀な例。原作はどうも伊良部のキャラ造形があまりにもわざとらしく感じられてしまったために、今一のめり込めなかったせいかもしれないけど(続編の『空中ブランコ』は直木賞を獲ったけど、「わざとらしさ」は払拭されているのだろうか・・・・・・? それとも読者次第?)。

それにしても、オダギリジョーはよくぞこの役を引き受けたものだと感心。

バタフライ・エフェクトバタフライ効果)」というのは、良く知られているように、「ある場所で蝶が羽ばたくと、地球の反対側で竜巻が起こる」という言い方に象徴されるカオス理論の一つで、初期条件のわずかな違いが将来の結果に大きな違いをもたらす、という考え方。この映画では、主人公は、仲間や愛する人たち、そして自分自身(の人生)を救うために何度も過去の様々な時点に戻って「条件」を変えることによって、それ以後の彼ら(と自分)の人生を大きく変えようとする(『トゥルー・コーリング』のある回を思い出さないでもない)。主人公の最初の人生(? つまり、初めてタイムスリップまでの人生)を描いていく冒頭部分は今一よく分からないかもしれないけど、何度も書いているように、それはこの種の作品にとって必要な手続き――つまり、伏線張りの作業――なので、文句を言わずじっくり観ましょう。

「映画史上最も切ないラストシーン」を謳い文句にしているようだけど、「映画史上最も切ない」かどうかは別として、確かに切ない良いシーンだった。オアシスによるエンディングテーマも印象的。DVD特典として「衝撃の別エンディング」が2本収録されているんだけど、これがまた別の意味で衝撃。どうしてこんなラストシーン候補が撮影されたのか理解出来ないくらい、どちらも酷いシーン――監督自身もコメンタリーで言っているんだけど(っていうか撮る前に気づけよ)、明らかに、それまでのストーリーをすべて台無しにしてしまうもの。どう考えても、本編に採用されているラストシーンこそが最良にして唯一でしょう。

それにしても、「初期条件のわずかな違い」による将来の結果の「大きな違い」を強調するためか、「違い」があまりにも極端に走り過ぎている感もあって、やや退くことも(そこまでやらんでも・・・・・・)。