森博嗣『レタス・フライ (講談社ノベルス)』(講談社ノベルス)

S&Mシリーズ、Vシリーズ、四季4部作と読んで来て、Gシリーズ(別名:ギリシャ文字シリーズ?)の1作目を読み終えた時点で見切りを付けて「追っかけ」を止めてしまったんですが、短編集だけは未だにちょっとだけ気になるので。

このタイトル、森氏のことだから「Let Us Fly」かと推測していた人が多かったようですが、実はそのままズバリ「Lettuce Fry」(そのままズバリの実物は作ってみたことがないんだけど、旨いのか?)。ショートショート5本と短編4本(ちょっと長めのショートショート2本を含む)。ショートショートの方は、個々に感想を述べることはしない。ただ一つだけ言えるのは、オチ自体に関してはどれも、一般的な(?)ショートショートに比較的よく見られるもののように思えるんだけど、そこへ持っていくためのプロセスこそがまさしく森風味濃厚で、思わずその雰囲気に呑まれてしまって惑わされることに。

「短編」は実質2本(当方比)。「ラジオの似合う夜」は、珍しく(?)感傷的なラスト。シリーズ読者には、「私」と電話の女性2人が誰であるのか分かるようになっているので、付加的な楽しみがほのかに得られたり。「刀之津診療所の怪」は、いくつかの「謎」と「解決」が与えられはするので、それらだけで十分楽しめるというのなら良いんだけど、恐らくほとんどの人にとって、ラストの意味が分からないことには完全には楽しめないだろうことは想像に難くありません。ラストの意味は、シリーズ読者じゃない限り決して分からないし、さらには、シリーズ読者であっても某短編を読んでいないと決して分からないし、その上、仮にそれを読んでいたとしても、よっぽど記憶力が良いか、たまたまつい最近読んだばかりでもない限り覚えていないだろうし、最後に、仮に内容を細部まで覚えていたとしても、未だに「ある勘違い」をしたままでいたなら尚更「???」だろうと思われます。

僕はと言えば、もちろんすっかり忘れてました。ただ幸いにもかすかに見当がついたので確認してみたら、ドンピシャでした。というわけで、お節介なヒント(というよりもはや答え?)――「ぶるぶる人形にうってつけの夜」。