一挙にレビュー

ここ数週間の間にDVDをレンタルして観賞した映画数本について一挙にレビュー。といってもホンの数言感想を書くだけに留めますが。

  • 『宣戦布告』(DVD

北朝鮮の特殊工作部隊が日本に上陸しちゃったらどうなるのか、というより、日本の政府ならびに憲法および法律はその事態にどう対処できる/できないのか、というシミュレーション・ストーリー。

「事件は会議室で起こってるんじゃない、現場で起こってんだ!」的な部分や、徹底して「エイリアン」として描かれる工作員たち、それに、自衛隊の協力を得られなかったにしては結構良く出来ていたように思う兵器や戦闘シーンなど、「プロパガンダ映画だ」という先入見は捨てて、単純なエンターテインメント映画として観た方が良いかも。

 公式サイト:http://www.toei.co.jp/sensenfukoku/

恩田陸の原作は未読だけど、ミステリィ映画はやっぱり観ておきたかったので。ただ結論から言うと、正直イマイチ乗れなかった。邦画特有の「暗さと間」が存分に醸し出されていたことも、乗れなかった理由の1つかも。一般に、どうもこの陰気臭さが嫌いで仕方がない。この映画に関して言えば、折角こんな豪華な女優陣と料理とを揃えているのに、華やかさが感じられない。それが要因となっているのかあるいはむしろ結果なのかはともかく、それぞれのキャラクタ造形自体があまり魅力的に思えなかった。そしてそれは、この手の作品にとって致命的であると思う。

また、ラストは原作にはない映画オリジナルらしいんだけど、「もう一捻り!」の意気込みは買うものの残念ながら成功していないと思う。折角の辻褄が合わなくなっては、「蛇足」どころか単純に「破綻」だ。

日本版『8人の女たち』みたいな感じかなという印象を受けたが、映画作品に関しては明らかに本家(http://www.gaga.ne.jp/8femmes/)の方に軍配を挙げざるを得ない。

 公式サイト:http://www.bandaivisual.co.jp/mokuyou/main.html

哀川翔の主演100本目作品ということは(個人的には)さておき。やっぱりこういうネタ(状況設定)自体に惹かれるものがあるわけでして。「浅野さん」も良かったし。基本的には、他の人たちのレビューを読んで心配していたほど外してはいなかったと思う。

ただやっぱり、あの地球外生命体(?)はなあ・・・。どんなに金を掛けても、皮肉なことに、こういう露骨なCGを使えば使うほど「安っぽさ感」が増して行く傾向にあって、ただまあ、少なくともこの作品に関してはそれも見越した上でのことだったんだろうけど、でもそれにしてもやり過ぎだろうと・・・。逆に、あのカニ男」の安っぽさ感は効果的に作用していたわけだけど、でもそれは、哀川ゼブラーマン(要するにコスプレ)と上手い具合に対比的だったから。(ストーリー展開上のその段階では)「現実世界の中でその二人だけポッカリ浮いている感じ」が醸し出されていて、可笑しかった。

それにしても、宮藤官九郎(脚本)と三池崇史(監督)って・・・相性的にはどうだったんだろう? だって、どう見てもキャラ的には真逆な感じだし・・・。それ(ってどれ?)が結果として作品自体にどういう影響をもたらしたのか(あるいはもたらさなかったのか)は、ちょっと興味がある。

 公式サイト:http://zebraman.jp/

京極夏彦の原作を読んだのはもう何年前になるのか分からないけど、インパクトは依然として残っていた。その作品の映像化とあっては、興味半分、心配半分・・・。特に京極作品は、その描写力に加え、「文字(活字)」自体も相俟って1つの世界を構成していることもあり、小説の時点で実は優れて「映像的」であるため、端から映像化を拒んでいるようにも思えてならない。

が、思いの外良かった。脚本やセット、そしてもちろん俳優陣の好演もあって、原作のイメージを決して壊さない(これって結構スゴイことだ)、でもそれでいて映像作品ならではの演出も効いていて。伊藤喜兵衛役が椎名桔平というのが、個人的にはちょっと意外な気がした(イメージが全く逆だった)が、結果としてはそれが、「いかにもな時代劇」風の印象を抱かせない要因かも。あるいは、正にそれを意図していたのか。

ただ、原作では、直接繋がりが無いように思えたエピソードが徐々にその複雑な繋がりを見せて行った結果のカタストロフィ、という展開も読みどころだったのだが、映画版ではやはり、さすがにその辺りを手際良く、というわけには行っていないように思えた。事実関係および人間関係が若干掴みづらいかも。それと、細かいことだが、最後の最後に現在の東京を映すっていうのは止めて欲しかった。まさかとは思うが、「二人の『永遠の愛』はこうして現在までも続いている」っていうことを示唆するための演出だとしたら、あまりにもチンケで、むしろ逆効果だ。折角の余韻をぶち壊しにしてしまっている。

そうは言っても、やはり全体としては決して悪くないと思う。京極作品の映像化としても、1つの映画作品としても、一定の成功を収めていると言って良いのでは?

ちなみにこの作品(原作)、京極夏彦が「四谷怪談」を翻案したというよりも、むしろ彼としては、「こうした出来事が人々の口を介して伝承して行った結果がいわゆる『四谷怪談』なのだ」というつもりで書いたのではないか。つまりこの作品は、彼が一連の「妖怪小説」において示して来た「怪異」に対する基本姿勢を、また別の形で(あるいは別の方向から)具現したものなのだと言えるかもしれない。

 公式サイト:http://www.iemon.com/


以上4本。共通点は――そう言えば、すべて邦画だな。