『オランダの光』

http://www.cetera.co.jp/library/holland.html

でも本当はこっちの方が断然詳しい(本国公式HP)。

http://www.hollandslicht.nl/indexeng.htm

フェルメールレンブラントら17世紀に活躍したオランダの画家たちの作品には独特の「光」が描かれていると言われているそうで。美術に疎いため聞いたことが無かったんですが、それは「オランダの光」と呼ばれているとのこと。で、この作品は、その「オランダの光」の「正体」に迫ろうとしたドキュメンタリー映画

「オランダの光」はそもそも本当に存在するのか? 存在するとしたら、それは本当にオランダに固有の光なのか? その要因は? 本当にオランダ美術に影響を与えたのか? 現代美術家、美術史家、気象学者、天文物理学者、農夫といった面々が、それぞれの立場から様々な見解を述べる。水、とりわけ湖の反射する光が深く関係している、いやそんなことはあり得ない、単なる画法に過ぎない――。その合間あいまに、オランダの風景を定点観測した映像などが流れる。

最後の方で、水槽を使った実験で「オランダの光」のメカニズムを説明しているらしきシーンがあったんだけど、あれはちょっとマヌケ。「オランダではこういう現象が多く見られる」ということは仮に示せたとしても、それこそが問題の「オランダの光」だということには全くならないから。どう考えても、そんな現象は世界の各地で比較的普通に見られるだろう、と・・・・・・。また、それが実験者当人の個人的見解の紹介に過ぎないのか、それとも製作者側の採りたい見解でもあるのか、といった点が不明瞭なのが難点。ただ個人的には、やっぱりそっちに荷担しているような印象を受けなくもない。

それはともかく、構成は実にシンプルで、全体として非常に静かだ。流れる映像も、オランダの様々な景色ではなく、むしろ比較的単調な風景(空と雲と水面)ばかりが意図的に選ばれている。「光」に意識を集中してもらうためらしい。正直に言えば、体調が優れなかったこともあるかもしれないけど、後半に来て何度か意識を失う。確かに「良い色(光)」が感じられる「風景画」ではあるんだけど、それが一層、「環境音楽」ならぬ「環境映画」的な雰囲気を醸し出すことに。多くの「ドキュメンタリー番組」とは違い、いわゆる案内役(司会やレポーター、あるいはナレーターなど)によって観る側の視点に一定の方向付けを与えるタイプではなく、様々な視点からの意見や情報を提供するだけして後は各自の判断に任せるという形式だったのも(でもさっきも書いたように、暗に誘導している節がなくもないんだけど)、「観賞疲れ」に繋がった一つの要因かも。全体として、この作品自体もまた一種の美術作品として製作されているような気がするので、そのつもりで余程関心を持って集中して観ないと結構ツライかも。ただ、意識を失っている間に見逃してしまった重要箇所もありそうなので、これはあまり正当な感想とは言えないでしょう。

なぜか一番印象に残ったのは、確か本編でも紹介されていたように思うけど、本国公式HPに行った時に最初に現れる、Michel Denee*1という人の"When I think of Dutch light, I think of Spinoza polishing his lenses"(「オランダの光について考える時、私はレンズ磨きをするスピノザについて考える」)という言葉*2

*1:"Denee"の後ろから2つ目の"e"の上部は点が付きます――カタカナ読みは知らん。

*2:ちなみに、スピノザというのはオランダ出身のユダヤ人哲学者で、当時の最新技術であったレンズ磨きを生業の一つとしていたことは良く知られています。